債務不履行と不法行為と不動産取引
- 不動産取引において重要な債務不履行
- 債権とは
- 債務不履行の類型
- どういったときに損害賠償請求できるの?
- 転売利益は全て損害賠償の範囲に入るのか?
- 不法行為に基づく損害賠償請求権
- 債務不履行と不法行為の共通点
不動産取引において重要な債務不履行

不動産取引において特に重要なのが、債務不履行だと思います。
債務不履行って不動産取引において、よく聞くフレーズだと思いますが、具体的にどういったことなんでしょうか?
債務不履行って、債務が不履行となった場合に損害賠償請求を出来るというもの。
では債務が不履行になるって具体的にどういったことかというと・・・
債権とは
債務っていうのが、債権(相手に対する行為を請求する権利)に対して、その行為を行うものをいいます。
住宅の売買契約で例えると、住宅を持っている売主とそれを買おうとする買い主がいて、売買契約を締結すると、売主は建物を引き渡す義務(債務)を負い、買い主は建物を引き渡してもらう権利(債権)を持つこととなる。他方買い主は売り主へ代金を支払う義務(債務)を負い、売主は買い主から代金を支払ってもらう権利(債権)を持つ。この様に両者が義務を負う契約を双務契約とか有償契約っていうらしい。
債務というのは債権者に対してその義務を負うものだということですね。
じゃあどうなったときに債務の不履行になるのだろうか?
債務不履行の類型
これには不完全履行・履行遅滞・履行不能というのがあります。
不完全履行は中途半端に履行すること。例えば買い主が代金の半額しか払わなかったら不完全な履行になりますよね。
履行遅滞は履行をするのが遅れてしまうこと。例えば1月1日までに支払うという契約だったのにその支払期日から遅れて支払いをすること。
履行不能はその履行ができなくなること。例えば売主が建物を引き渡す前に火事で建物が無くなってしまって引き渡しを出来なくなること。
これらの一つに当たれば債務不履行になる。
どういったときに損害賠償請求できるの?
じゃあ債務不履行になると直ちに損害賠償請求できるのか?ということだが、そう簡単にはいかない。
それは因果関係がなければならないから。(民法第416条)
因果関係が必要。それはそうですよね。だって因果関係がない損害を賠償しないといけないって普通ありえないですよね。
賃貸借契約で家を借りていたときに、地震が起こって家が倒壊した(損害の発生)。賃借人は建物を善良なる管理者の義務を負う(善管注意義務)から、その損害の賠償をしないといけない。。。これってありえないですよね。だって損害との因果関係がないからです。
だから債務不履行による損害賠償を求める事ができるのは因果関係がある場合になります。
そして例外として当事者が予見可能性がある損害(特別損害)であれば損害賠償を出来ることがあります。これってよく言われるのが転売利益。
転売利益であれば全て損害賠償の範囲に入るのか?
ところがこういうと全ての転売利益(酷い場合だと売買後に転売って言えばそれも認められると思っている)が認められるとか極論になりがちだから気をつけた方がいい。
これはあくまで売主が知っていたり、予見可能であった場合に限る。
それは転売って最初に売買が成立してその後に転売をするから、最初の売買が債務不履行になっていれば転売はできない。だから債務不履行のときって転売利益は発生しない。つまり転売による損害も発生しないのだから損害賠償という話にはならないのです。ところが売主が転売することを知っていたり、予見可能であれば買主が転売による損害が発生しないように配慮すべきであるから、売主に債務不履行があった場合には例外的に損害賠償を責任を負う事になる。
ということであくまで予見可能性があるものであって全ての転売利益が損害賠償の対象となるわけではありませんのでご注意を。
不法行為に基づく損害賠償請求権
不法行為も損害賠償請求を認められています。
何が違うのかっていうと、不法行為は財産権を侵害された時に発生する損害賠償請求です。(民法第709条)
だから契約関係になくても他人の権利を侵害し損害が発生すれば損害賠償請求権が発生します。
例えば壊れそうな擁壁を放っておいたらそれが崩れて隣の家が倒壊した場合。これは契約関係にはなく、もちろん債権債務の関係はないから債務不履行はありません。でも隣の家の所有者の財産である家が倒壊して損害が発生しているので、この損害に対して故意か過失が認められれば不法行為による損害賠償請求ができます。
もちろん因果関係は必要で、因果関係が認められないときは損害賠償を請求することはできません。
車を運転していて自損事故を起こした(損害の発生)ところただ助手席に乗っていた(運転を邪魔したとかじゃない)ら、助手席の人がその損害の賠償をしないといけない。。。これってありえないですよね。だって損害との因果関係がないですよね。 だから損害賠償を請求することができないということです。
債務不履行と不法行為の共通点
そしてその賠償責任は債務不履行のときと同じく相当因果関係の範囲によって賠償が決定されるようです。なぜなら不法行為の場合は債務不履行の規定(民法第416条)を類推適用するからです。
債務不履行も不法行為も①損害が発生して、その②原因に故意または過失があり、その損害と原因の間に因果関係がある場合に損害賠償請求ができるということですね。
ここで①~③のいずれかがない(例えば故意または過失がないとか)ときは損害賠償請求はできないようです。
不動産取引では債務不履行や不法行為の問題となる場合があるので知っていた方が良さそうです。