建物を取り壊したけど忘れてしまった滅失登記
不動産の取引をやっているとちょっと癖がある物件を取引することがある。
登記をした建物を取り壊すとその建物滅失の日から1ヶ月以内にその建物の滅失の登記を申請しなければならない。これは不動産登記法に定めてある。
だから一般的に建物を取り壊した後に建物の滅失登記を申請するため、その建物の登記は残らない。
ところが滅失登記を忘れてて、解体した建物の登記が残ってしまう場合がある。
そうすると建物の滅失登記を忘れた場合ってなんとなく嫌だから減価されるなんて考えもありそうです。おそらく価格交渉の場面になるとそう主張するのが常套手段だと思う。
でも本当に減価するのでしょうか？
そこで滅失登記を忘れた建物の登記が残った場合の土地に対する減価について考えてみます。
ちなみにこの減価率は決まったものがあるのではなく私の個人的な考えのもと記載している事にご留意ください。
減価の要因について考える
私が思うになぜ減価が発生するのかというと、それは費用性からの減価、市場性からの減価、収益性からの減価がある。
それは不動産の価格の評価って、価格の三面性である費用性・市場性・収益性から表現されてるおり、価格が価格の三面性から表現されているならそれを減価するものも価格の三面性から導くことが自然だと思うからです。
ではその価格の三面性ってどんなの？っていうと・・
費用性というのは、原価に着目した考えなんですけど、例えば建物を工務店などに発注した場合に建物の建築コスト（材料から各種申請、設計監理、作業員の労務費など）に工務店の事務経費や利益などを含めた原価から導き出されるものです。建物に限らず売られている商品は、その商品の原価にそれを作成した企業の利益などを含めた価格から決められていることって多いと思う。その流れで価格を決定するのが費用性。
市場性というのは、売主がいてそれを購入できる買主（貨幣的支出に裏付けられた需要者）がいることで成立する価格。不動産で言えば取引事例であり、そもそも買主がいない様な価格水準は購入できる買主はいないためこの市場性による価格から外れます。
収益性というのは、投資することによって得られる収益に着目して決定されること。新しい機械を購入するにあたり、維持費や作業の時間効率等を鑑みその価格で購入する価値があるか（つまり投下資本に収益性が向上するか？）とか、不動産であれば投資用不動産を購入することによってどれだけの収益が得られるか？その収益に対するのであればこの価格という様に決まるのが収益性。
減価の要因を本件に当てはめて考えてみる
さてここで本題の建物滅失登記を忘れた場合の土地価格の減価についてですが、『建物滅失登記を忘れた』ことがどの様な影響を及ぼすのかというと・・・
費用性からするとその土地を利用するに際しコストがかかる（例えば建物を建築するのに余計な費用や時間がかかってしまったりすること）場合に減価が生じます。では滅失登記を忘れた建物登記がある場合に建物の建築コストが増えることなどがかかる場合はあるのかというとそれはない。滅失登記を忘れいても建物は問題なく建てられますよね。新しい建物に影響する事として、しいていうなら家屋番号に枝番（〇〇が〇〇ー1とかになる）がつくくらいかな。
まぁ滅失登記に費用がかかるからそのコストに対する減価が・・・って話もあるかもしれないけどそもそも滅失登記をしなければ土地を利用することができないわけでもないから土地に対する減価は認めにくい。それに調査費等は調査士によって異なるのでそこは別として滅失登記だけの費用であれば数万円で終わってしまうから大勢に影響はないと思う。
次に市場性ですが、実際に滅失登記をしていないから土地の取引価格が安くなるという話は聞いたことないし、評価って基準がいろいろあると思いますが私は今のところ滅失登記を忘れたことによって減価をするというものを見たことがない（あるのかもしれないですけど）。あくまで私の知る狭い世界での話になりますが、滅失登記を忘れたことによって市場価値が下がるということは考えにくい。
最後に収益性は、例えば忘れられた滅失登記がある事によって、賃料が安くなることや建物の容積率に制限がかかるなどの影響があるのであれば収益に影響があると言えると思いますが、そういったことはないと思う。
ゆえに建物解体後の滅失登記を忘れた土地の減価は無しもしくは小さいのではないかと考えます。
ちなみに滅失登記を忘れた建物の登記があると金融機関から融資を受ける際に断られる可能性もあり、そうすると僅かながら有効需要に影響する可能性もあるので登記が残っていない方が良いという事は論を俟たない。
