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賃借権の対抗関係と敷金の取り扱い

賃借権はどんな権利なのか?

法定地上権の話の時にでましたが、賃借権は債権であり、この債権というのは相手に対する行為請求権です。

この行為請求権というのは、不動産賃貸借契約であれば賃借人が賃貸人に対して契約内容に応じて使用させて下さいということ。

そのため契約当事者でない者が目的物の使用を邪魔してきた場合は、その相手に直接邪魔をしないでくださいといえないのが原則(占有権や債権者代位権の転用等は別として)です。なぜならその目的物の物権がないし、相手に対してはその行為をやめて欲しいという請求権(行為請求権)がないからです。

でもそのままでは困りますよね。。邪魔する相手を賃貸人にお願いして対応してもらうことはできる(賃貸人は賃借人に使用収益させる義務があり、賃貸人は自分の物権を行使するから)ものの、それではなんだか遠回り・・・

どうにかならないのでしょうか?

賃借権の対抗要件

そういえば賃借権でも対抗要件を備えていれば所有権にも対抗できる・・・つまり賃借権が物権に対抗できる。ということは賃借権も物権と同様に直接的、排他的に目的物を支配する権利をあってもいいのではないかというのが不動産の物権化の話です。

そこで対抗要件から考えてみます。不動産の対抗要件は民法第177条にありましたよね。この話って・・

例えば土地を賃貸借契約によって借り受け(賃借権の登記をしていない)、その土地に建物を建築したとします(登記をしていない)。その後貸主が土地を売却したとしましょう。そこで賃借人は新たな土地の所有者に土地を借り受けていると主張することができるでしょうか?

この場合残念ながら土地を借り受けていると主張することができません。この賃借人が新しい所有者に土地を借りていると主張することを対抗するといいます。そしてこの土地の賃貸借契約は、先のとおり行為請求権だから、原則として賃借人は新しい所有者に対抗することができません(売買は賃貸借を破るっていいますよね)。

だから賃借人は自分の権利を守るためにも対抗要件を備えるべきなんです。

それは借地借家法の適用がある土地の賃貸借契約であれば、まず借地借家法による賃貸借契約の対抗要件(建物の登記)を備える。その要件を満たしていなくても民法上の対抗要件(借地権の登記)を備えていれば新しい土地の所有者に対抗できるとされています。

実はこの考え方っていうのが重要で、まず特別法である借地借家法で対抗できるのか?次に民法で対抗できるのか?という順番で検証されます。

やっぱり不動産は登記が大事です

しつこいようですが不動産の権利を主張するには、原則として登記を必要としています。(民法第177条)

だから借地の場合には建物か土地の賃借権の登記が必要みたいです。(建物の賃貸借契約は、借地借家法の規定で引き渡しによって対抗することができます。)

ちなみになぜ建物の登記が対抗できるのかというと、そもそも賃借権を登記すればそれを対抗することが出来るということだったのですが、その賃借権を登記するには所有者の協力を得なければなりません。ところが土地の賃貸借契約は登記に協力する義務がないからこれが難しい。だから賃借人を保護するために借地借家法で保護されているようです。

賃借権の物権化

借地であれば建物を登記すると新たな所有者に対抗するできる事ができる。つまり新たに土地の所有者に対して賃借人の地位を主張する事ができることとなる。ということは、賃借権という債権が所有者に対抗できるという物権と同様の効力を持つことができるのであれば、賃借権に物権と同様の効力を持たせてもいいんじゃないの?っていうのが先ほどあった賃借権の物権化という話です。

だから賃借権を対抗できるようになれば、土地に何の権限もない人が勝手に土地を使用する様なことをするのであれば、賃借人はその相手に対して直接やめるように主張することができます。

敷金って所有者が変わるとどうなるのか?

実は敷金もその対抗による影響があります。

土地を借りていて、建物を建築しましたがその建物の登記をしておらず、土地の賃借権の登記もしていませんでした。

これでは賃借権を対抗することは出来ないですよね?

じゃあ敷金は誰に返してっていえるのでしょうか?

それは旧所有者からしか返してもらえません。

なぜかというと賃借権を新たな所有者に主張できないのであれば、もちろん新たな所有者がその目的物を持っていたとしても、新たな所有者との間の賃貸借契約の関係はありません。そうであれば敷金を新たな所有者から返してもらうのは出来ないですよね。そもそも賃貸借契約すら成立していない相手から敷金を返してもらうというのはおかしな話ですよね?(ちなみに敷金契約は賃貸借契約と別とされているようです)

だから結論として賃貸借契約を対抗できないときは、その敷金を返して欲しいともいえないということ。

競売の場合の敷金はどうなるの?

じゃあ競売になった場合に賃貸借契約の対抗関係はどうなるのだろうか?

まず整理しないといけないのが、この場合に何と賃借権が対抗関係にあるかというもの。これが分からないまま話をすると結論を導くことが出来ないため重要なんです。

この場合って抵当権の登記と賃借権の対抗要件をどちらが早く備えるかってことになります。ところがこれを競売によって新たな所有者と賃借人との間で対抗関係を考える人が以外と多い。でもそうだとするとよく考えたら不都合ですよね。

なぜならそれだと抵当権者は賃借人のいないときに抵当権を設定(賃借人の負担がない不動産・・つまり所有者が自由に使える)していても、抵当権設定後から競売前の間に賃借権が対抗要件を備えると、新たな所有者は賃借権の負担付きの不動産を手に入れることしかできないため(所有者が自由に使えない)不動産の価格が安くなる。

ということは抵当権者は自由に使える不動産を担保として評価しているのに、賃借人の負担がある不動産を基礎とした資金回収しかできず、不測の損害を被ることになるから不都合なんです。(法定地上権の話にもこのフレーズがありましたよね)

だから抵当権を設定した時点で賃借権を対抗できたのか否かで判断します。そしてこれだと競売によって取得する新たな所有者も抵当権者と同じく建物が賃借権の負担があるか否か判断ができますよね。

またこれによって賃借人も敷金が返ってくるのかこないのかを確認することができますので、賃借人は賃借権の対抗要件を備えるの前に抵当権があるか否かを確認した方がいいといえそうですね。

今回の記事に関連するものとして

不動産の対抗の意味がわかった

法定地上権ってどんな時に発生するのか(成立要件)

があります。

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